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Wizard Bible が閉鎖するらしい 追記あり

※2018/04/24追記 Wizard Bible vol.62 (2016,3,27) から削除された記事を読んだ感想を追記しました
※2018/04/22 Wizard Bible の閉鎖を確認しました
※2018/04/20追記 筆者の推測をさらに追記しました
※2018/04/20追記 筆者の推測を書きました
※2018/04/19追記 閉鎖理由がさらに詳細になっていたので差し替えました
※2018/04/18追記 閉鎖理由の本文中の伏字が外れていたので、差し替えました(伏字だった箇所は大文字にしている)

日本版『Phrack』とも言えるコンピューターアンダーグラウンド系のウェブマガジンである『Wizard Bible』が4月22日の24時に閉鎖するらしい。
Wizard Bible
www.phrack.org
※上記サイトで配布されている実行ファイルがマルウェア扱いされてブラウザに「危険なサイト」扱いされていたようだが、現在は解消しているようである

閉鎖の理由が何やら穏やかではない。

閉鎖の理由について述べるべきですが、
自分だけでなく周囲にまで影響を及ぼしてしまう恐れがあるため、詳細については控えさせてください。

Wizard Bibleの一部の記事が「不正指令電磁的記録提供」に該当するとされ、家宅捜索でデジタル機器を押収され、問題となった記事は削除しました。
そして、Wizard Bibleの存続については、警察に対して「Wizard Bibleがいかに大事なものであること」「今後の方針を改善すること」を訴え、今後の運営は問題ないことになりました。
ところが、その後の検察(警察でないことに注意。検察が事件を起訴するかどうかを決定する)とのやり取りにて、Wizard Bibleの存続案については一蹴され、結果として閉鎖しなければならなくなりました。
「問題のある記事が投稿された場合、記事の内容を改めたとしても、投稿者のPC内のそのファイルが存在するのでアウト。通報しなければならない」
アンダーグラウンドな内容を含むWizard Bibleを続けることは反省が足りない」という主張のようです。

警察の見解:「問題となった記事を削除すれば、Wizard Bibleの運営は問題なし」(「不正指令電磁的記録提供」に該当しないようにすればよい)
検察の見解:「アンダーグラウンドな内容が集まるWizard Bibleを運営するのは論外」(ほんの一部の投稿が不適切であっても、そういったものが集まる時点で悪い。一部が悪ければ、全体も悪い)

4/22の24時に閉鎖する予定です。
それまでの間、アーカイブ化したものをDLできるようにしました。

引用:Wizard Bible 2018/04/20閲覧

追記を重ねているため「詳細については控えさせてください」の直後に「「不正指令電磁的記録提供」に該当するとされ、家宅捜索でデジタル機器を押収」となっているのはご愛敬。

筆者はかつてWizard Bibleに寄稿していたことがあるが、10年以上前のことである。今回のゴタゴタの内情は全くわからないが、警察は「法律を守れ」というのは至極当然に思えるが、検察の主張は焚書ではないのか。「アンダーグラウンドな内容が集まる日本国家を運営するのは論外」とはならないのか。どこの都道府県の検察なのかはわからないが、検察としてのレベルが地方によってムラがあるとしか思えない。

閉鎖までウェブサイトを固めたzipが配布されているので、必要と感じる方はダウンロードすべし。すでにGithubなどに転載されているようである。WBは基本テキスト情報なのでいくらでもばら撒くことができるものと思うのだが…。「消すと増える」ストライサンド効果ってご存知でしょうか。

筆者の推測 2018/04/20追記

初めてWizard Bibleを知った人からは分かりにくいが、Wizard Bible vol.62 (2016,3,27) の『第1章: トロイの木馬型のマルウェアについて』の執筆者は当時高校生で、2017年6月に不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕されている。
www.kahoku.co.jp
逮捕を受けてWizard Bibleからその記事は削除されている。Wizard Bibleトップページによると、警察の主張は「法律を守れ」という点では一貫しているが、検察の主張はただの言論統制でしかない(全貌が明らかでないので断言はできないが)。これがウェブマガジンでなく紙媒体になると「表現の自由」「出版の自由」で回避できそうだがダメな気もする(なんだかPGPみたいだが、法律の専門家ではないので濁しておく)。情報セキュリティに関する情報を発信すると、下手をすると不正指令電磁的記録違反とかなんとか言われそうだ。これからは(海外から発信しているという体で)英語で発表するしかなさそうである。

2018/04/24追記 遅まきながら、削除された『第1章: トロイの木馬型のマルウェアについて』を読んでみた。タイトルに釣られそうだが、その実はC言語で記述されたクライアント・サーバー型のごくごく基本的なソケットプログラムの解説だった。脆弱性を利用したコードも含まれておらず、利用者の意図に反するような動作(例えばゲームソフトと偽って個人情報を抜き取るようなプログラム)も見当たらない。悪用を推奨するような記述もない。ただえさえウイルスの定義が曖昧な「不正指令電磁的記録」な条項なのに、ソケットプログラムの技術書の頭の方に書いてあるようなごく基本的なコードをウイルス扱いしたというのであれば驚きである。田舎警察、田舎検察と言われても仕方のないことではないのか。

Wizard Bibleトップページで「家宅捜索でデジタル機器を押収」とあるが、IPUSIRON氏のツイートを遡ってみると、確かにネット環境がない期間があったようである。
警察に押収された物品は、事件が決着した後には返却される。ただし、カイジ利根川ではないが、いつ返ってくるのかは警察の気分次第である。

Winnyの作者で鬼籍に入られた金子勇氏のウェブサイトは今もこんな具合である。

そろそろノートだけでもいいから返してもらえないと仕事に支障がでるのですがどんなもんなんでしょうか・・・・

しかし、IPUSIRON氏のツイートを見る限り、押収されたデジタル機器は返却されているようなので、WBに関する事件はすでに決着がついているのだろう。


外野が無理にWBを続投させようとするのは変な話だし、(検察の主張はアレだが)本人が閉鎖を決めたのだから、これに他人が口を挟むものではない。大変な思いをしたようだが平穏な日常に戻れたようなので、10年来のいち知人として良かったと思いたい。

ただし、公権力による「情報セキュリティの情報公開に対する萎縮効果」は議論されなければならないと思うし、同じような事態が繰り返されるようなこともあってはいけないと思う。これについては自分なりに考えて動いていきたい。

22日に閉鎖されたWizard Bibleに関しては、ぜひHTTPステータスコードの451を返すよう設定してもらいたいところだが、警察や検察が「反省していない」「あの時は反省したフリをしていただけだったのか」と受け取るだろうから難しいですね…。