ど~もeagle0wlです(再)

140文字では収まらないネタを記録するブログ

次世代ワールドホビーフェアに行った

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テトリス99ブース
キモい日記です。次世代ワールドホビーフェアに行ってきました。小学館(≒コロコロコミック)主催なので主なターゲットは親子連れであった。自分もかつて通った道なので、何か童心に戻れるものはないかと一通り見たが、世代が違うからやっぱり違う。CERO C(15歳以上推奨)の『フォートナイト』のブースに小学生が群がる姿を見て、形骸化という単語が頭をよぎった。ニンテンドースイッチで遊べるし、基本無料だし、小学生に人気だからね。仕方ないね。

バンダイの『爆釣バーハンター』と、ブースが対面にあるバンダイナムコの『釣りスピリッツ』が、同じ釣りゲームということで声を張り上げて客引きに精を出していた。バンダイバンダイナムコが競合しているのである。このことを疑問に思う子どもがいるとして、それを説明できる親はいるのだろうか? 自分もわからん。

ルイージマンション3』の試遊台は二人ペア限定、『マリオメーカー2』は小学生限定と、想定客層以外にはとことん渋い任天堂だったが、ニンテンドースイッチオンラインに加入すれば(TETRIS 99モードは)無料で遊べる『テトリス99』の試遊台があった。
topics.nintendo.co.jp

ニンテンドースイッチオンラインの有料ユーザー数はスマブラSPの効果もあってか、今年4月時点で1000万人を突破したそうだ。しかし離脱率も気になる。『スプラトゥーン2』もファイナルフェスを迎えるし、そもそも現行の年契約で2400円(ひと月あたり200円)というのはオンラインゲームサービスとしては正直安すぎるのではないだろうか。小学生の月の小遣いの金額から逆算して値段が先に決められたような気がする。ほとんどの対戦ゲームはサーバー維持費を削減できる(がユーザー側の回線品質は悪くなる)P2P型を採るなか、『テトリス99』はバトルロイヤル形式なのでC/S型通信であるが、テトリスのルール上通信量も少ないし通信遅延も許容できる、設計が正しければチートも非常に難しい、超理想的な組み合わせである。

そうだ、なんで自分はWHFに行ったのか。『テトリス99』の試遊台では「CPUバトルモード」が展開されていた。試遊台に並べばマリオのノートがもらえる。さらにテト1(1位)になれなくても、99人中10位以内に入れば特製ステッカーがもらえるというので、腕試しとばかりに仕上げてから立ち寄ったのである。CPUレベルは5段階中の3設定。CPUからの攻撃も積極的ではなく、終盤は火力を送らずとも粘っていれば勝手に自滅してくれるので難しくはない。自宅での練習では10戦10勝と超楽勝レベルであった。

テトリス99』の待ち行列に付いて、前の客を観察していると、世代的に言って『テトリス』は昔のゲームであるせいか、開幕テンプレ積みしたり、Tスピンを使ったり、終盤RENで仕留める大人げないプレイヤーは見当たらなかった。ただ、平積み(左か右の端を1列空けて棒を待つ基本的な積み方)はおろかHOLDを使っていない人もいた。ぜひもう少し鍛錬を積んで、脳内麻薬をいつでもどこでも分泌できるようになって欲しいと思うが、今の子供がテトリスをどう受け止めているのかが疑問に思う。10位以内に入るともらえる記念ステッカーが予定通りのペースで配られているのか、見ていて疑問に思った。

思念しているうちに順番が回ってきた。マリオのノートを受け取り、ラミネートされた遊び方表を差し出されるも「大丈夫です」とやんわり拒否。いざ試遊台に立ってみると、コントローラはプロコンだった。プロコンの方向キーは十字ボタンであるが、テトリス99で上ボタンはハードドロップであり、左右ボタンを押しているつもりで上に入ったときのダメージが大きい。自分は上下左右ボタンが分離されている標準のJoy-Conを使っているが、いやな予感がした。テトリスは重要な局面でのわずかな操作ミスが即死に繋がる非常にシビアなゲームである。自分の力量なら間違いなく勝てるゲームなので、速度を落として正確な操作に務めるようにした。

いつものように開幕パーフェクトクリアに成功。しかし上ボタンが暴走を始める。テトリミノが3つ続けて即座に落下した瞬間諦観に変わった。立て直しを図りつつTスピンを決め、ゲーム内で「あと50人!」のアナウンスが入る。自分はこのタイミングで作戦を「とどめうち」から「カウンター」に変えるが、隣のブースの音響がやかましく全く気づかなかった。高く積み込みを行ってからまとめて消す起伏のあるテトリスをやめ安全策を採ることにした。ゲーム内で「あと10人!」のアナウンスが入る。これで記念ステッカーの獲得は確定した。事前リサーチから特に勝負に出なくてもCPU同士自滅してくれることはわかっていたが、魅せプレイのために4列RENの積み込みを行うことにした。積み込みで操作ミスをするとやり直しが効かず最悪即死、1列ずつ消す際に操作ミスで途切れると攻撃力がリセットされてしまう。積み込みはうまく行ったが、消している最中に操作ミスを起こして一気にやる気が無くなるが、再度消している最中に1位が確定し、コントローラを置いた。

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テト1(ただしCPUバトルレベル3)
ブースのスタッフが床に置かれていたハンドベルを手に取り、福引きに当たったかのように鳴らし始めた。本来誇らしい結果なはずなのに、逆に恥ずかしくなってしまった。大人げないからである。記念ステッカーをもらってその場を離れ、1時間後にもう一度並び直して再びテト1を取り、記念ステッカーをもう一枚もらい会場を後にした。

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ノートと記念ステッカー
で、この記念ステッカーごときにまし゛になっちゃってと゛うするの という件についてだが、テトリスはこれだけの知名度に反して、関連グッズやノベルティの類が極端に少ないんですよ。正方形の組み合わせにデザインもクソもあるかという点で片付けられる問題なんですが。

テトリスカンパニーのクオリティチェックやコラボ企画などは謎の残る物ばかりで、まさかのクソゲーオブザイヤー2015にノミネートした『テトリス アルティメット』しかり、つい先日サンリオとコラボしたが、tetris.com で元から公開されているブラウザ版テトリスの背景を変えただけの手抜き仕様でLV25からテトリミノが1秒間に4つ降ってくるところもそのままの覇王鬼帝『サンリオ×テトリス』、そういえば2016年には電通が「テトリス」の日本国内商品化権と広告利用権を独占的に獲得しながらも鳴かず飛ばず、『テトリス99』リリースの翌月にあたる今年3月に無事契約期間を満了、2014年にはジャンルはSFで三部作という壮大なプロットを打ち出すも今日一切の進展がない映画化の話など、テトリスが世界中でヒットした最大の要因である「文学性が全くなく、キャラクターも一切存在しない」点が、横展開を極限まで難しくしている。テトリスはゲームとして出すしか無いのである。

オンライン対戦テトリステトリスフレンズ』は5月末にひっそりと息を引き取っていた。任天堂とアリカが作った『テトリス99』は確変状態だが、IPを握っているだけではダメで、新しいアイディアを加えることのできるデベロッパーに渡せるか次第なのは歴史が証明している。そしてそのアイディアはガイドラインという形で、テトリスカンパニーに体よく吸い上げられる訳である。その傍証としては、『テトリス99』とコンセプトが類似しているもののテトリスカンパニーの許諾を得ているという『Tetris Royale』ハァ? って感じではある。
automaton-media.com

テトリス99』ダウンロードコンテンツ第3弾! TGMモード追加! の可能性に一縷の望みを託してみる。今更TGMシリーズに興味を持ち出したので、秋葉原か川崎に行けばTGMシリーズは遊べるが、そろそろ家庭用で出し直すべきだと思うのだ。TGM ACEとは何だったのか。

TETRIS 99 -Switch

TETRIS 99 -Switch

テトリス99のパッケージ版(定価は3400円)が出るそうである。Nintendo Switch Online個人プラン12か月利用券(2400円)とDLC第一弾(1000円)が同梱されているので、パッケージは実質無料である。


自分の成績はこんな感じ。自分が上手いのかどうかが未だによくわからない。『テトリス99』の第4回テト1カップは3500pt貯めましたが落選しました。このまま続けても勝率は大きく上がらないと思うので、2000戦を区切りにいったん休止して、原稿の進捗を進めることにします。本当に申し訳ありません。

テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム

テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム

文章自体はやや冗長な気がするが、これ面白いです。

レトロゲーム勉強会#03に参加して喋ってきた #retrogstudy

飯田橋にあるインターネットイニシアティブでなぜか行われた「レトロゲーム勉強会#03」なる勉強会にLTで参加した。
retrog.connpass.com

この謎の勉強会は3回目の開催で、今のところLTとして皆勤。
1回めの『主にマジコンの話を振り返る』は予想外の事態で発表がウケてしまったので、2回めの『レトロブライトを試してみた』は自分のブログで書いたネタの要約という軽いネタにした。3回めはどのネタでいこうか考えたが、他の参加者から絶対に飛び出してこないネタであろう「ゲームの翻訳」を調査することにした。

www.slideshare.net

簡単に資料を作れるネタではないことは覚悟していたが、スライド作るのにここまで時間がかかるとは思わなかった。そして発表時間が10分しかないLTでこのネタをやるのも無謀だった。実際10分では間に合わず直後の休憩時間を食いつぶしてしまい、申し訳ないことをしてしまった。

※本スライドでは「和製レトロゲームの」としているので、元が洋ゲーである「残虐行為手当」や「コインいっこいれる」は除外した。

パク…参考にした書籍

今回特にパク…参考にした4冊の書籍をここに記す(勉強会に持参して手に取れるようにしました)。

This be book bad translation, video games!

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This be book bad translation, video games!www.fangamer.com
洋書。和製タイトルのダメな英訳を多数取り上げつつ、翻訳家としての論考が添えられた一品。
fangamer.com から購入可能。

Legends of Localization Book 1: The Legend of Zelda

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Legends of Localization Book 1: The Legend of Zeldawww.fangamer.com
洋書。初代『ゼルダの伝説』の日英翻訳を比較した書物。ハードカバーでフルカラーの立派な装丁。
fangamer.com から購入可能。

Legends of Localization Book 2: EarthBound

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Legends of Localization Book 2: EarthBoundwww.fangamer.com
洋書。『MOTHER2』(北米ではEarthBound)の日英翻訳を比較した書物。ハードカバーでフルカラーの立派な装丁。400ページを超える大著。洋書なので、本作に頻出する日本のサブカルネタも含めて徹底的に解説されている。「糸井節」とも呼ばれる台詞回しには、川柳、回文、どせいさん語が含まれており、翻訳家がいかに苦心したかが読み取れる。MOTHERファンを自称するなら絶対に読んだほうがいい。
fangamer.com から購入可能。

レトロゲーム超翻訳セレクト

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www.bit-games.com
和書。ゲームの和洋を問わず一風変わった翻訳を取り上げている。良い翻訳やダメな翻訳、原作の意図を飛び越えた超訳などバリエーションは豊富。
bit-gamesから購入可能。

『テトリス99』の第2回テト1カップ当選しました

ブログの更新含めて、いろいろと進捗が停滞しているのはこういうことです。

twitter.com

イベント中に得た100ptを一口として、抽選で999人に999ゴールドポイントが進呈されるというものでした。
topics.nintendo.co.jp

4024ptを得ていたので、40口の抽選でしたが当選しました(前回は落選)。
999ポイントを追加する形で『ぷよぷよテトリスS』を買いました。

バトルロイヤルゲームとしては、2017年がPUBG、2018年がフォートナイト、2019年がApex Legendsが出た直後にテトリス99が出ていて、Apex Legendsは配信開始72時間で1000万ユーザーを超えたとのことですが、テトリス99はアクティブユーザー数が公表されていないので気になりますね。

TETRIS99がやっぱり面白い


Nintendo Switch Online に加入していれば無料で遊べます。
テトリス不思議のダンジョンシレン限定)、絶滅危惧種ピンボールや物理抽選のあるメダルゲームのように、同じ展開が二度として起こらないゲームが好きです。それ以前に遊んだテトリスは「テトリスDS」が最後で、T-Spinを使わずテトリス消し最適化のBackToBack一辺倒でしたが、TETRIS99を始めてからは、少ない列数(手数)で高火力が望めるT-Spinダブルとそれを効率良く行うドネイト、開幕テンプレ積み(パフェ積み一辺倒)を覚えてから楽しくなってきました。端を空けて積むテトリス消しよりはだいぶ頭を使う必要がありますが。テトリスは現代の囲碁将棋ですね。
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ちなみに「イベント期間中に1位を取ると抽選で999人に999ポイントが当たる」イベントは落選しました。

現在のランクは65。58時間プレイで635戦中99人対戦で1位になれたのは84回で、勝率は13%に収束している。バトルロイヤルの性質上近いランクのプレイヤー同士でマッチングすることはあまり無いみたいなので、これが上手いのか下手なのかがわからないのが悲しいところ。ただしランク60を超えたあたりから、序盤からでも他のプレイヤーからの集中攻撃を受けやすくなった…気がする。さらなる火力を求めて開幕以外でもT-Spinトリプルは狙ってできるようになりたい。

現行のTETRIS99の「ステータス」には、連続1位回数は残らないんですね。バトルロイヤル系なので1位を取るのは困難を極めますが、YouTubeのライブでは何十連勝もしているプレイヤーがちらほらいるので実装してもらいたいところ。筆者は3連勝が限界です。

TETRIS99が面白い

2月14日に、ニンテンドースイッチで突如配信開始となったTETRIS99が面白い。

ニンテンドースイッチオンラインに加入していれば無料で遊べる。PUBGを契機としたバトルロイヤル系のFPS/TPSは数あれど、まさかのテトリスで99人対戦。FPSやTPSはちょっと…という方でも、テトリスなら試してみたいと思うはず。

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TETRIS99
99人から1位を目指すのは(乱戦必至なので)至難の業だが、自分の腕ではトップ10には安定して入れるようになってはいるが、トップ5からはなかなか安定しない。99人相手に3連勝できたが、もうちょっと研究を重ねる必要がありそうだ。

余談ではあるが、99人対戦ということは、P2P接続では無理でC/S型接続が使われていると思うが、C/S型は相応のコストがかかるはずなのでどうしているのだろうか。テトリスだからシビアなリアルタイム性が求められるという感じでもないので、いけるのかな? という認識でもあるのですが…。

AERA今週号に掲載されました

月曜発売のAERA 2019年2月4日号(表紙は稲垣吾郎)の連載見開きの写真ページ「師匠と弟子 90 ホワイトハッカー」(p82-83)に掲載されました。dマガジン版には掲載されていないようです
publications.asahi.com

写真がメインで文章はサブといったグラビア記事です。日本ハッカー協会の元ボスが師匠、自分が弟子です。私はハッカーを自称したことは一度もないのですが、こういう立ち回りが求められるようになった、ということでご理解いただけたらと思います。詳細は文章を読んでいただきたいのですが、自分は仮想通貨には興味を持てないので詳しくない、というスタンスです。

ちなみに、写真全体に漂っているソースコードPhotoShopによるデジタル合成ではありません。黒い網をカメラ側に貼って、その網にプロジェクタでソースコードを表示している画面を半投影するアナログ合成で作成されていますが、なかなかにいい味が出ていると思いました。
あと、自分は体重が増えると、真っ先に顔の輪郭に出るのですが、前もって絞っておくべきだと思いました。

Amazon.co.jp

楽天ブックス

『ドラゴンクエストXを支える技術 ── 大規模オンラインRPGの舞台裏』を読んだ


縁があって青山プロデューサーより発売前に紙の本をいただきました(Kindle版も入手したがこちらは自費)。本をいただいた以上感想を書くのは礼儀だと思っているのでつらつらとネタバレ回避を意識しながら書いてみます。

とても読みやすい本だと思います。MMORPGとしてのドラゴンクエストXが持つ、数多くある複雑な技術要素を平易に記そうという努力が伝わります。何よりも「MMORPGの開発/運営/運用ノウハウを記した書籍」がまっっっったくと言っていいほど存在しないはずの現状に対して、国内最大手MMORPGである『ドラゴンクエストX』を題材にした解説書が出たという点が希少価値なんです。

ただし、具体的な実装方法には踏み込んでいないので、これ1冊で何か作れるようになるというものではないです。解説項目が多岐に渡っているし、個々のトピックスを下手に掘り下げると収拾がつかなくなるから、このぐらいのバランスで良いと思います。エンジニアの末席にいる私としては少し物足りないと感じる箇所はありましたが、読む人によって重視したい点もバラバラだろうから仕方ないですね…。

「ゲームの作り方」みたいな本はいくらでもあるんですよ。これが「オンラインゲームの作り方」になると本当に数えるほどしか存在しないんですよ。なぜか? ゲームを一つ作るだけでも様々な専門技術が必要なのに、オンラインゲーム、特にMMORPGともなると、本書の章立ての多さからわかるように「面白いゲームを作る」だけではダメで、さらなる専門技術を動員する必要がある。その専門技術もだいたいはゲームの面白さとは直接関係しない(大量の同時接続を捌けるサーバーを構築できたとしても、ユーザーからしてみれば「動いて当然」となる)。それゆえに、相当の予算と覚悟も必要となる(そういう意味では、ひたすらオンラインのFPSMMORPGを送り出し続けている韓国はすごいと思う)。当然ながら、開発会社も膨大なリソースを投入して獲得したノウハウを大盤振る舞いで開示したりするようなことはしない。

概要には「著者のこだわりによりプログラミングやドラゴンクエストXの事前知識がなくても読み進められるよう丁寧に解説しています」とあり、対象読者に「ドラゴンクエストX冒険者のみなさま」(=プレイヤー)が含まれていることから、「メモリ」「CPU」みたいな超基本的な技術用語や、「プロデューサー」と「ディレクター」の役割といったゲーム業界用語の解説から行われているので、前半はなんとか読み解けると思います。後半ではサーバーサイドの話が出てくるので、非エンジニアの「ゲーム好き」だと読み解くのは少し大変かもしれない(何度か読み返せば理解できるはず)。

本書では、開発環境や運営体制などが一通り書かれていますが、時折見せる具体的な数字(「ドラゴンクエストXC++ソースコードは1,000万行以上あり」「ドラゴンクエストXのサーバログは1日に約100億行です」「結果として0.00002秒の通信遅延がときどき発生していました」)からフリーザ様のような絶望感を覚えるわけです。いちプレイヤーとしてみれば、それだけの大プロジェクトであるという認識でいいと思うんです。ただ、いちエンジニアとしては、これは本当に娯楽を提供するための設備なのか? 金融とか信販系のレベルではないのか? とも思うのです(基本オンプレミスだし、一部のバックエンドは銀行レベルのスペックのものを使っていることが記されている)。

当然ながら、大勢のプレイヤーが好き勝手に動くMMORPGにおいて、いきなり決定版を世に送り出せるかというとそうはいかず、様々な不具合や高負荷、障害に直面するたびに「こうやって工夫して乗り切った」ことがいろいろと書かれています。文章上では、比較的淡々と書かれているように読めましたが、徹夜で対処を行い体得したものが血となり肉となっているはずだから、注意深く読んでみると味わい深いものがある…はず。

最終章である「第12章 不正行為との闘い」は開発者側から語られることがほぼないトピックスであり、一番気になるところではないだろうか。自分も気になったが、読んだ感想としては「そら安易に手の内を明かす訳にもいかないよなあ」といったところであり、これはどうにもならない。RMT対策について、業者特有の行動のクセに言及していたのは面白かった。チートに関しては、本書の表現では「明確に問題視された」1件について触れている(これは刑事事件化している)。この辺は無闇に情報を開示するわけにもいかないので仕方ないことだろう。

ということで、本書が持つ様々なキーワードに気になるものがあったら、読んで損はないと思います。これ1冊読んだだけではゲームを作れるようにはなりませんが、ドラクエXを実現するために必要なたくさんの要素をインデックスとして頭の中に持つことは、ゲームの中身が気になるという人にとっては絶対にプラスになるはずです。デザイナーやプランナーも読んだほうが良いと思いますよ。あと、オンラインゲームもある種の「異世界モノ」と言えるので、そういう小説を書きたい人はディテールを深めるためにも良いかもしれない。最後にひとつ。「あとがき」にある、「最高の技術力」の定義が素敵だと思いました。これは各自で確認してほしいです。

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カバーをはずすと「たけやりへい」が…(Kindle未収録)

Kindle版について

レイアウトは紙の本そのままではなく、電子書籍用にある程度組み直されている。巻末の索引は単語の羅列だけになっているが、Kindleの検索機能を使えばいいので特に問題はない。

枝葉にも程がある誤字指摘:紙の本ではp187
誤 シングルポイントには最新の注意を払う必要があります。
正 シングルポイントには細心の注意を払う必要があります。