【厳選】有償/無償で公開されているゲーム専用機のROMイメージたち 後編 実用・メガデモ編
2016/09/18追記 記事が長すぎるので2つに分割しました。
2017/05/19追記 『8BIT MUSIC POWER』をこちらに移動。メガデモ『OverDrive 2』追加
2019/08/27追記 表題の表現を修正しました。「正規に公開されている」「有償/無償で公開されている」
前回のエントリに続き、動作確認という面目で活用できる正規に入手できるROMイメージを紹介する。後編は実用アプリ・メガデモを中心に紹介する。
音楽ソフト
8BIT MUSIC POWER
キラキラスターナイトを手がけたRIKI氏が中心となって新規開発されたファミコンゲームで、こちらはゲームというよりは音楽ソフトに近い。楽曲提供者はとても豪華。実物のカートリッジがパッケージされて一般販売されている。ムック本も発売されており、付属のCD-ROMにはROMイメージをはじめmp3データ、サウンドドライバNSD.lib対応のMMLデータも収録されている。
http://riki2riki.com/html/0_sample_8bit.html

8BIT MUSIC POWERサウンドブック (三才ムックvol.878)
- 作者: RIKI
- 出版社/メーカー: 三才ブックス
- 発売日: 2016/06/09
- メディア: ムック
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(FC/FC互換機用) 8BIT MUSIC POWER (8ビットミュージックパワー)
- 出版社/メーカー: コロンバスサークル
- 発売日: 2016/01/30
- メディア: Video Game
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実用アプリ
LSDj(Little Sound Dj)
www.youtube.com
ゲームボーイ/ゲームボーイカラー用。ゲームボーイ実機での動作を前提としたトラッカーベースの作曲ソフトで、Chiptuneと呼ばれる音楽ジャンルではデファクトスタンダードとなっている。私も正規ユーザである。専用ケーブルを使ってのMIDIのコントロールや、複数台との同期といった野心的な機能もある。
http://www.littlesounddj.com/lsd/
ROMイメージは有償(498円)で提供されており、購入すると過去のバージョンも含めてダウンロードできるようになる。ただし、データのみの販売であるため、エミュレータではなく実機で使うためには、別途専用カートリッジ(いわゆるマ●コンに相当するもの)が必要。私はGB USB smart card 64Mを使用している。

GB USB SMART CARD 64M for GB / GBC / GBA / ゲームボーイ ・ ゲームボーイアドバンス 専用 バックアップ ツール
- 出版社/メーカー: EMS
- メディア: Video Game
- 購入: 1人 クリック: 2回
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https://krikzz.com/store/home/8-everdrive-gb.html
ChipTuneのイベントでは、ゲームボーイを2台使ってのDJプレイも行われている。ゲームボーイ互換の機種は多数あるが、初代ゲームボーイが最も音質が良いらしい。
バックライト化や本体のライトアップ、プロサウンド化(ノイズ除去)といった改造が行われており、改造用の部品を販売する専門サイトも複数存在する。筆者はHand-Held Legendを利用したことがあるが、発送がとても早かったことを覚えている。
handheldlegend.com
利用したことがないが、Thursday Customsで売られてるものもなかなかよさ気である。
LSDjと双璧をなすゲームボーイ用作曲ソフトにnanoloop(バージョン1.3はゲームボーイ用、2.0はゲームボーイアドバンス用)があるが、こちらは実機カートリッジの販売のみ(=ROMイメージは売ってない)だが品切れが続いていることと、現在はiOS/Android版が存在しておりユーザーがほぼ移行していることから、簡単に紹介するだけに留めたい。
Nanoloop 2.0
技術デモ・メガデモ
tokumaru_raycaster_01.nes
ゲームではなく技術デモなのだがこれは凄い。Wolfenstein 3DまたはDOOMで見られる擬似3Dをファミコンで再現している(いわゆるRay casting)。マップはとても小さく、敵キャラなどは一切現れず、武器も使用できないが、十字ボタンでそこそこなめらかに移動できる。グラフィックを画面に直接書けないハードでここまでやるのは凄まじいことである。
Index of /tokumaru
dollhouse
2012年に発表されたファミコンのメガデモ。ファミコン製のメガデモは意外と数が少ない。最初は円を描く多数の点が様々な動きを見せる。ファミコンソフトのコードは普通6502のフルアセンブリ(またはC言語)で記述するものだが、本作はなんとLispで記述されている。縦に長いページの一番下からダウンロードできる。
Fun with Lisp: Programming the NES - Informal Methods — LiveJournal
high-hopes
2007年発表。ファミコンのメガデモとして最高峰の出来。PAL専用でRetroPieからは動かせなかったのだが(設定を精査すればできるはず)、どうしても紹介したいので記す。ラスタースクロールを酷使したエフェクトと、当時の8bitCPUにありがちな「掛け算・割り算命令がない」状況で、いかに3D風のグラフィックを表示するかがメガデモのキモであった訳だが、ファミコンで実現したという点は注目されるべき。音楽もマッチして非常に良い。
http://www.pouet.net/prod.php?which=31539
20y
2009年に発表されたゲームボーイ(白黒)のメガデモ。ゲームボーイとファミコンはよく性能を比較されがちだが、白黒4色と低解像度であること以外はゲームボーイの方が格段に性能が高い。それでもここまでの表現ができるのがすごい。音楽も良好。エンドロールのrespectに、星になったレジェンド横井軍平さんの名前があるのが泣ける。
20y by Snorpung :: pouët.net
It Came from Planet Zilog
2015年に発表されたゲームボーイカラー用のメガデモ。ゲームボーイカラーはゲームボーイにただ色が付いただけでなくハード性能が大幅に向上しており、8bit時代のメガデモでよく見られるネタがつめ込まれている。タイトルのザイログ星(Planet Zilog)は知っている人ならニヤリとできるはず。
It Came from Planet Zilog by phantasy :: pouët.net
Smash It
2014年に発表されたスーパーファミコン用のメガデモ。海外のデモパーティでは、20年以上前のマシンで動作するプログラムがごく当然のように出展される(そういう部門がある)。音楽がスーパーファミコン離れしていてカッコ良く、音楽データ(spc形式)を同梱しているあたりは自信の現れか。ROMイメージはPAL版のみだが問題無く動作する。
http://www.pouet.net/prod.php?which=64255
Matt Current
2007年に発表されたゲームボーイアドバンスのメガデモ。ゲームボーイアドバンスは本体発売前に開発資料・ツールが流出しており、本体発売前なのに第三者によってエミュレータが作られるという事件があった。そのぶんハードウェア・グラフィック処理の解析も早くから進んでおり、市販ソフトですら見ることが出来ないほどの性能を引き出したメガデモが作られている。
Matt Current by Shitfaced Clowns :: pouët.net
同じ作者が前年に発表した『Five Finger Discount』も合わせて見ると、240×160ドットという低解像度のマシンとは思えないほどの3Dグラフィックを堪能できる。
Five Finger Discount by Shitfaced Clowns :: pouët.net
Newton never did this, BITCH
2005年に発表されたゲームボーイアドバンスのメガデモ。動画が全く見つからなかったのでスクリーンショットのみ。いかにもCG然とした人工物ではない、自然にありそうな物体の表現に挑戦しており、とても自然に見える。重厚なサウンドも聴き応えがある。繰り返しになるが、240×160ドットという低解像度のマシンとは思えないほどの3Dグラフィックである。ぜひとも見て欲しい。
Newton never did this, BITCH by Shitfaced Clowns :: pouët.net
OverDrive
2013年に発表されたメガドライブのメガデモ。メガドライブは北米・南米・欧州ではスーパーファミコンを抑えてトップシェアを握っていた。ブラジルでは2009年にメガドライブ4(正規ライセンス品)が発売されていた。動画はドイツのデモパーティ「Evoke 2013」で発表された時のライブ映像。観客のどよめきがすごい。
Overdrive by Titan :: pouët.net
日本でもTokyoDemoFestというデモパーティが毎年行われている。私も参加したことがあるが、↑の映像のようにダイレクトに反応がある(=観客がおおらか)のがとても面白い。
Tokyo Demo Fest 2018
OverDrive 2
2017年に発表されたメガドライブのメガデモ。前述と同じ作者によって作られている。YouTube上では、720p50設定での視聴が推奨されている。スーパーファミコンにはMode7やスーパーFXチップで拡大縮小回転ができたが、ハードウェアにその機能が搭載されていないメガドライブで動いていることに驚愕する。テキストを読むと、undocumentedな仕様を駆使しており、このデモが動くエミュレータは発表時点で存在していないらしい。つまり実機のみ。
Overdrive 2 by Titan :: pouët.net
Finally
前述のOverDriveの作者が2012年に発表した、とってもとっても希少なワンダースワンのメガデモ。ワンダースワンってこんなことまで出来るのね…。RetroPieだと該当するromsフォルダが用意されていないが、前のエントリで解決方法を前述した。
*Finally* by Titan :: pouët.net
たまに起こる不具合
一部のHomebrewアプリを起動しようとすると、以下の様な画面に遭遇してメーカーロゴがバグって進まないことがある。
これは、ゲームボーイやディスクシステム、ゲームボーイアドバンスなどで採られていた、数あるコピー対策方法のひとつである。これらのハードは、起動時に任天堂のロゴを表示して、その後ゲーム本体が立ち上がるという流れになっている。任天堂とのライセンス契約を結んで、任天堂から提供された開発環境で開発された市販ROMイメージの中には「任天堂のロゴの画像データ」が入っている。起動時にはこの情報を参照して、本体側が持つロゴ情報と一致すれば起動することができる。つまり「任天堂のロゴの画像データ」がゲームを起動するための鍵となっている訳だ(実機でもカセットをしっかり挿さずに電源を入れると、鍵が読めず同じような画面に遭遇する)。
任天堂とのライセンス契約を結ばずにゲームを作成しようとした場合、ゲームを起動させるためには、ROMイメージに「任天堂のロゴの画像データ」を鍵として埋め込む必要がある。この鍵は隠蔽されている訳ではなく、ROMイメージのヘッダ領域にベタ書きされているものなので技術的な対策ではない。しかし、この鍵をコピーして、任天堂とライセンス契約を結ばずに製作されたROMを起動しようとすると、起動時に任天堂のロゴが表示されてしまう。つまり任天堂の商標を詐称したことになるので、商標の侵害で法的措置を取れる…という一種の罠である。この際に文句を言われるのはソフトウェアの提供者であり、利用者ではない。なお、任天堂がこの罠を根拠に法的措置に出たかどうかは不明。
エミュレータではこの問題が起こらず、何事も無く起動できるものがある。そもそも起動時にGAME BOY Nintendoとサウンドロゴの画面をスキップすれば良いのだから。
次回はPCエミュレータの追加方法を記す。