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『ハッカーの学校 ハッキング実験室』を読んだ

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データハウス様から本書をいただいてから2ヶ月弱も経ったが、『ハッカーの学校 ハッキング実験室』(黒林檎著・データハウス)を読んだ。

ハッカーの学校 ハッキング実験室

ハッカーの学校 ハッキング実験室

タイトルや装丁を見る限り、いわゆるIPUSIRON3部作『ハッカーの学校』『個人情報調査の教科書』『鍵開けの教科書』に続くシリーズっぽいが、本作は別の著者である。

ハッカーの学校

ハッカーの学校

ハッカーの学校 個人情報調査の教科書

ハッカーの学校 個人情報調査の教科書

ハッカーの学校 鍵開けの教科書

ハッカーの学校 鍵開けの教科書

いぷろん本は、様々な書籍からの「メモサイト」であるSecurity Akademeiaに立脚した構成である。とはいえ、コピペブログの安易なそれとは違い、膨大な読書量でないとこの文章量と密度は出せない。本書は著者が違っており、プログラムとソースコードの解説が主体となっている。したがって、『ハッカーの学校』を冠しているが構成や文体は全く異なる。

いきなり比較から入ってしまい申し訳ないが本題に入る。

本書はPythonを習得していることを前提としている。Twitterのアカウントを自動取得するbotの開発に始まり、TwitterのDM機能を利用したC&Cサーバの実装まで行っている。言うまでもないが悪用可能な技術である。Twitterに限らず、フォロワー数やいいね、再生回数のようなカウントはお金で買うことができる。これらは自動取得されたアカウントによって「自作自演」されている。C&Cサーバについては言うまでもない。実装自体はシンプルなので、そのまま悪用を考えてもすぐバレて終わりだと思うが、ここから「自分ならどう工夫するか」を考える余地、という行間の面白さが本書にはある。本気で悪いことを考えようとしているのであれば当然の発想なのだが、だからといって気を利かせて本文中で無闇に勧めたりしてしまうと有害図書まっしぐらである。このバランスは難しい。

Pythonで通信プログラムを書いた経験があれば本書の内容は理解できるはずである。ただしロジックの説明が弱いと感じた。レイアウトの制約が厳しい紙の上で、わかりやすく説明するのは非常に難しいことだが、コードが読めないと難儀するかもしれない。繰り返しになるが、本書はプログラムとソースコードの解説が主体である。タイトルが示す「実験室」は、前3作との違いを明確に表現している。しかし、ソースコードは紙に印刷されたもののみなのが辛い。暗号が武器とみなされこのままでは輸出規制に引っかかるため、ソースコードを書籍にして言論・出版の自由を盾にして国外に合法的に流通させたPGPのように、大人の事情なののだろう。

この著者は学生の頃に書いたそうだ。自分が初めて書いた原稿も学生時代だが、今日に至ってもまだ共著で出したことしかない。単著で書ききるのはとてもとても大変なことである。ましてや、学生だと引き出しも限られるのでさぞかし大変だったと思う。SNSが普及した今となっては誰もが「作文」しているが、単に書くだけでは作文技術は磨かれない。ウェブに上げる文章よりも、書籍として出る文章の品質はずっと管理されるべきと思うので、身構え方も異なると思う。自分は原稿を初めて書くことになって慌てて『日本語の作文技術』と『理科系の作文技術』(どちらも名著)を読んだ。こういう体たらくなので『クラッカー・プログラム大全』の自分の文章は今見るとひどすぎて読み返したくない。本書の著者もそういう取り繕いをやっているのではないかと想像すると、これはこれで面白い。自分も頑張らないとね。

理科系の作文技術(リフロー版) (中公新書)

理科系の作文技術(リフロー版) (中公新書)